• 愚問 (特別編)
  • 2013年09月04日 (水)
  • 21時48分46秒
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2013.09.04(水):愚問



愚問

日の傾きかけた砂漠を隊商が行く
その駱駝と人の群れを砂の丘に昇って
東洋人の髪のように黒いサソリが眺めている

傍に横たわる骸の女に見向きもせずに

暗澹たる闇が降りてもサソリは動こうとはしない
己が何者かも知らぬ曖昧さで其処に佇んでいるのだ


─ 幾ばくの時が過ぎただろうか
月の焔が 骸の女を恍惚と浮かび上がらせた

サソリは女に眼を遣り愚問する
「何故美しいのか」と

─ 女は答えない

凝固する血の涙にサソリは更に愚問する
「何故泣くのか」と

─ 女は答えない

苦悶の形相におぞましい逸楽を感じながら
サソリの愚問は続く 
「何故死ぬのか」と

─ 女は答えない

そして 四度の愚問を遮るように月は雲に呑まれ
闇が全てを覆い尽くした

答えぬ女の顔を黒いサソリは無造作に這ってゆく
女とサソリの間にはもはや何も無い
其処にはただ生と死が転がっていた

 


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【以下追記】

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